野の書とは、かっこうよくない努力についての記録である。
アメリカの大学と日本の大学の合同授業として “Community Arts and Culture Development Practice (地域の芸術文化開発実践)” 講座を担当している。内容は、4回の講義とディスカッション、4回のゲストレクチャー(美術館学芸員、アートイベントプロデューサー、アーティストなど)、7回の日米合同グループワーク。日本語を話さない学生、英語を話さない学生が混在なので、バイリンガルで授業を行っている。ゲストがいらっしゃる場合は、通訳の人に依頼。
さて、講義の部分は私が担当しているので、本日の最初の講義の記録をブログに書いておきたい。この講座は1〜2年生向け、一般教養的な位置付けの講座である。
全4回の講義の第一回のテーマは、「アートは何のためにあるのか?」となった。この講座はアートを専攻していない学生も多く、アートとその周辺的な事柄を4回に分けて講義することに。講義といっても、一方的にレクチャーするスタイルではなく、答えはない問いかけになるようワークショップの形式で行った。1人で、バイリンガルで講義。
Lecture 1: What Is Art For? / 講義 1:アートは何のためにあるのか?
授業の最初に、全員にA4の紙と鉛筆を配り、以下の質問をしてみた。
What is art for you? Pick one word to express “What is art for?”
あなたにとって、アートとは何のためにあるのでしょうか? アートは何のためにあるのか?を表す単語を一つ選んでみてください。
Me / 自分
選んだ単語をA4の紙に書いて、教室の壁に貼ってもらった。
Healing(癒し)、Expression(表現)、Communication(コミュニケーション)、A mirror of the times(時代の鏡)
などの単語が並らぶ。
いくつかの映像を見てもらいます。映像を見ながら、自分が選んだ単語が上手くあてはまるかどうか、考えてみてください。
まずは、Lascaux Cave(ラスコー洞窟)です。授業ではよく取り上げられるので知っている人も多いのではないでしょうか。1940年に18歳の少年が犬と散歩をしている時に、犬が洞窟の穴に落ちてしまい発見されたと言われています。残念ながら、多くの人間が洞窟に訪れるようになると、壁画へダメージが顕著になり、現在は入ることができません。この洞窟に描かれいる壁画は、皆さんが選んだ単語に上手く当てはまりますか? ちなみに、ここに描かれていたのは、「動物」「人間」「人間の手形」「抽象的な記号」でした。
次は、Gazaです。エジプトのピラミッドは、知らない人はいませんね。ピラミッドは何を表していたのでしょうか? 有名なクフ王のピラミッドは、どうして建てられのか、どのように建てたのかについての定説が存在していません。
アイヌのダンスについてのドキュメンタリーを見てもらいます。このダンスはどうでしょうか? 皆さんが選んだ単語が上手くあてはまるでしょうか?
ダンスが踊られている限り、アイヌの文化は続いていきます。映像にも出てきましたが、アイヌは「人間」という意味だそうです。アイヌのダンスは、人間であれば誰でも踊ってかまいません。「人間」のダンスなのですから。
さて、少し長い映画ですが、アイ・ウェイウェイさんのドキュメンタリーを見てもらいます。
Ai Weiwei: Yours Truly (trailer) — https://en.wikipedia.org/wiki/Ai_Weiwei
この映画は、いろいろなことを考えさせます。この時代に、自分の意見を発言したことで、刑務所に入れられてしまう人々が多くいることに驚きます。
さて、いろいろな画像を見てもらいました。
どうでしょうか? 皆さんの中の「アートは何のためにあるのか?」は、変わっていきましたか? 変わっていても、変わっていなくても、アートを表す単語を、もう一度書いて、壁に貼り出してください。授業の最初に書いた単語と同じでもかまいません。新い単語でも大丈夫です。
もし、皆さんの選んだ単語が変わったのであれば、このような変化は、トランスフォーム(転換)と呼ばれます。このトランスフォーム(転換)がアート作成、アーティスト活動の特徴の一つです。二週間後のレクチャー2のテーマは、この「トランスフォーム」です。
さて、来週の講座は、「三茶 de 大道芸」プロジェクトから、三人の素敵なゲストがいらっしゃいます。特に、プロデューサーの橋本さんは、「アート」という言葉を使い大道芸のことについて話してくれると思いますので、橋本さんがどのような意味で使っているのか考えながら聞いてみてください。橋本さんに、アートを表す単語を選んでもらうのも面白いかもしれませんね。
では、また来週。