92歳 Blue Note の夜に
ブルーノートの空気が
秋の夜をやわらかく染める
静かなざわめき
息を呑む気配
アルトサックスの音が
空気を切り
心に触れる
若く
深い音 音色
長い時間を
今この瞬間に奏でる
目を閉じると
過ぎた季節が
音に溶け込んでいく
涙がでてくる
音楽を聴いて 涙がでるなんて 久しぶりだ
貞夫さんの音は
やさしく 暖かく そして
どこまでも自由だった
92歳という事実と
10際のときに聞いた音が そのままそこにあることと
いや むしろ
その数字こそが音楽になっていたのかもしれない
音が
ゆっくり消え
拍手の波が
静かに広がる
彼は深く一礼し
さらに息を吹く
ありがとう という音
